『女性セブン』の印刷中断事件と宇多田ヒカルと藤圭子の背後事情

▼『セブン』の記事が差し替えられた!

「『セブン』が印刷中の輸転機を急遽ストッブさせて、記事を差し替えたらしい」
マスコミ各社にこんな情報が流れたのは、4月7日の午後のことであった。この日、通常なら刷り上がって一部の即売店て売られているはずの小学館発行の女性週刊誌『女性セプン』4/22号(4月8日発売)がなぜか、まったくどこにも出回らなかったのである。

「編集部には7日の午後から問い合わせの電話が殺到して、一時はパニック状態になったらしいですよ」(小学館関係者)

そして翌日になって、店頭に並べられた同誌の表紙はなんとも奇妙なものだった。濃紺のページの中で真ん中だけは白地がポッカリと空き、そこにスミ文字で宇多田ヒカルと母・藤圭子」と大書されたレイアウト、ロゴの左側に妙に目立つ空白−−。いったい『女性セプン』に何が起きたのか。

かつて同じ女性週刊誌である『女性自身』が皇室の写真ミスから回収騒ぎになった経緯もあり、当初は「『セブン』は皇室スキャンダル、それも雅子か紀宮の大スクーブをやったんだが、宮内庁の圧力で記事を差し替えた#などというもっともらしい説も流れた。だが、事実は意外にも別のところにあった。ある広告関係者がこんな証言をする。

「いや、差し替えられたのはまさに表紙にあった『宇多田ヒカルと母・藤圭子』の記事ですよ。私はたまたま差し督え前の『セブン』の新聞用広告ゲラを見ることができたんですが、その時点では同じ宇多田・藤の名前は入っていたものの、内容はまったく違ったものでした」

そう、『セブン』の輪転機を止めたのは、今や日本全国で大ブレイク中の宇多田ヒカルだったのである。

それにしても、いかに人気絶頂のアーティストのスキャンダルとはいえ、公称50万部を誇るメジャー週刊誌が刷り直しをするほどの記事とは、どんな内容だったのか。

これについても当初は、様々な瑞摩臆測が流れた。日く、「宇多田の出生に関して、差別的な表現があったらしい#「母親の藤圭子の売春スキャンダルをスッバ抜いていた」等等…。だが、真相はあまりに拍子抜けのするものだった。ある芸能ジャーナリストが記事の中身についてこんな証言をする。

「記事は、藤圭子の地方営業のルポですよ。『娘の大ブレイクの陰で母親はドサ回りの日々』みたいな切り日で、面自おかしくその模様を紹介したもの。宇多田の大ブレイク以降、母親の藤の動向は一切秘密になっていたんてすが、『セブン』はあるタレコミをもとに地方の小学校で営業することをキャッチ。現地に出向き、現在の藤の歌声、ショーの様子、ヒカルに関する発言などを取材したんです。もちろんショーの写真まで押さえたらしく、当初はそれを表紙に掲載してあったんです。ところが、宇多田サイドの圧力があり、発売直前に急違そのくだりをすべてカット。写真もボツにしてしまった。印刷が遅れたのはそのためですよ」

実際、発売された『セブン』を見ると、タィトルこそ「宇多田ヒカルと母・藤圭子母娘の絆をなぜ隠す」と勇ましいが、中身は当たり障りのない解説記事。写真はおろか、藤圭子の地方営業のくだりなど、一行たりとも書かれてはいない。

しかし、である。不可解なのはこの程度のことで、輪転機ストップなどという事態にまで発展した理由である。そもそも、決定的な醜聞ならまだしも、母親がドサ回りをしているどいう程度の記事で、宇多田サイドがここまでナーバスになる必要はないだろう。

ところが、取材を進めていくと、今回の事件の背後に、宇多田ヒカルの送り出すポップな音楽からは想像もできないような複雑な事情、「闇」の部分が浮かぴ上がってきたのである。

▼藤圭子との関係を隠そうとする父親

先月号の本誌コラムでも触れているように、宇多田の所属レコード会社である東芝EMIは、宇多田の素顔やプライバシーが公開されることを極度に嫌がっている。例えば3月15日にあったFMラジオの公開収録の時には、東芝EMIのスタッフが約50人ほど出勤。公開収録にもかかわらず、大きな幕でスタジオのガラス窓を覆って、一切写真を撮らせないという行動に出たのだ。

「『FOCUS』などは3メートルもあるようなハシゴを持ってきて必死に撮っていたけど、他のメディアはほとんどお手上げ状態。通りの向かいにあるビルに入ったカメラマンもいたけど、そこまでEMIのスタッフが配置されていた。何であそこまでやるんだろうね」(スポーツ紙記者)

4月2日に行われた東京での初ライブでも、またもや強い”報道管制”を敷く東芝側とカメラマンとの小競り含いが暴行騒ぎにまで発展したと伝えられた。これらは東芝側のとった戦略といわれているが、実をいうと、すべてはある人物の意向だという。その人物とは他でもない、宇多田ヒカルの父親であり、大ヒット曲「Automatic」のブロデューサーでもある宇多田照實だ。

「照實さんはヒカルが9歳の頃からU3やCUBIC Uを仕掛けるなど、その音楽活動のすべてを仕切ってきた存在ですからね。大ブレイクした今ではヒカルのスケジュールはもちろんのこと、プロモーションやマスコミ対策まですべてに口を出してくる。我々は彼のいいなりですよ」(東芝EMI関係者)

そして、この関係者は、照實がヒカルをマスコミから極度に遠ざけようとするのは、巷間いわれているような「情報飢餓状態を煽る」というような戦略だけではなく、もうひとつ別の理由があるという。

「照實サンがもっとも嫌がっているのは、それこそ藤圭子とヒカルとの関係がクローズアップされることなんです。実際、ヒカルのプレイク以降、藤圭子を一切マスコミの前に出していないし、藤との関係を報じたマスコミ記事に異常に厳しいチェックをかけています。マスコミが藤のことを報道するたびに激怒するため、我々レコード会社は音楽雑誌の取材に対していちいち『藤圭子のことには触れない』という確約をとっているほど」

もちろん、これは藤圭子の希望ではない。それどころか、藤自身は逆にヒカルのことをキッカケにもう一度脚光を浴びたい、という思惑すらもっているようなのだ。

「藤本人は、マスコミに出ていきたいはずですよ。何と言っても自慢の娘じゃないですか。ヒカルが小さい頃から娘の自慢話ばかりしているような人だったんだから。それに藤は少し前からポッブス歌手としての展開を望んでいるらしいですから、本来なら”親子共演”でもプチ上げて、自分も再度売り出したいと思っているはずなんです」(芸能ジャーナリスト)

にもかかわらず、いったい照實はなぜ、ここまでヒカルの実の母親であり、自分の妻である藤の存在をヒカルから遠ざけようとするのか。先の東芝EMI関係者がこう漏らす。
「ようするに、照實サンにとって大事なのはヒカルだけ。藤はむしろ邪魔な存在になったということでしょう」実をいうと、ヒカルの両親である宇多田照實・藤圭子夫妻の関係は巷間いわれているようなオシドリ夫婦といったものではないらしいのだ。

▼ヒモだった父親と藤圭子の「関係」

1969年9月、『新宿の女』でデビューし、「天才演歌歌手」として一躍脚光を浴びた藤圭子だが、19歳で前川清と結婚してから、その人生は一変する。結婚わずか1年で前川と離婚、そして突然の芸能界引退宣言の後、81年、単身ニューョークに波ってしまうのである。そして傷心のニューョーク滞在中、知り合ったのが、現夫の宇多田照實だった。 ふたりは翌82年に入籍、そして83年には二ューョークでヒカルを出産と、一見すると幸せな家庭を築いた風に見えるが、実をいうととんでもない間題を抱えていた。それはズバリ、照實にまったく収入がなかったという問題である。当時を知る芸能関係者が語る。

「照實は藤と結婚当初、マスコミにミュージシャンだとか、翻択業だとかいっていたんですが、調べてみるとレコードを出した形跡も本を出した形跡もない。実際は定職をもたずブラブラしていて、藤の貯金で食いつないでいたんです」

実際、アッという間に生活資金も底をつき、二人は日本に帰国。生活のために藤は芸能界にカムバックし、照實は藤の所属事務所「テックス」の社長におさまる。だが、その実態はまさに「ヒモ」としかいいようのないものだったようだ。

「事務所といっても所属タレントは藤ひとりだけ。無理矢理地方営業をさせて、それで食いつないできたようです。しかも、照實はシロウトのくせにあれこれと口を出し、いろんなところでトラブルを引き起こしていたようですね。藤が元の所属事務所やレコード会社と揉めて、レコードを出せなくなったのも照實が原因なんです」(前出・芸能関係者)

実をいうと、藤もこうした照實の態度にはほとほと困り呆て、何度か別れようとしたこともあるようだ。いや驚いたことに、ふたりは一度ほんとうに離婚しているのである。

「ヒカルが生まれて3、4年後ですか。二人は一度大喧嘩して籍を抜いているんです。もちろん原因は照實のタカリぶりに藤がキレたからです。ところがそれからわずか18日後に、二人は復縁してしまった。この後も籍こそ抜いてませんが、何度も『別れる』といって出ていった藤を照實が説得して連れ戻すということを繰り返していたようですね。もちろん愛情なんかじゃないですよ。何しろ、照實は営業先の有力者のところに藤一人で接待に行かせてたくらいですから。唯一のメシの種である藤を手放すわけにはいかなかった、それだけです」(前出・芸能関係者)

ところが今回、ヒカルが大プレイクしたとたん、こうした二人の関係は逆転してしまう。今は逆に藤のほうが照實に捨てられるのではないかとビクビクしているというのだ。 「照實はヒカルにかかりきりで藤の存在を一切無視しているようなんです。藤は今の状況に相当孤独な思いをしていろと聞いています。かといって今、別れたら、ヒカルを照實にとられてしまうのは目に見えていますから、別れるわけにもいかない。今や力関係は完全に逆転して、藤は照實のいいなり。マスコミに出たくても出られないんです」(前出・芸能関係者)

ようするに、ヒカルという新たな「金のなる木」を手に入れた照實にとって、藤はもう必要のない存在になってしまったということなのだろう。いやそれどころか、藤の演歌歌手という経歴や暗い過去は宇多田ヒカルというきわめて現代的な商品の足を引っ張る邪魔者でしかない−−照實はそう考えているのではないのか。だとしたら、まさにその「負」の部分をクローズアップした『女性セブン』の記事を止めようとするのは当然かもしれない。

▼記事を止めたのは暴力団関係との見方

しかしだとしても、である。コワモテ大手プロのバーニングならともかく、売れっ子ミュージシャンを一人抱えているだけの事務所社長に、はたして大手週刊誌の輸転機を止めるなどという荒業が可能なのだろうか。実際、今回、『セプン』の記事を止めたのは照實や東芝EMIではなく、バーニングではないかという説も流れている。だが、これもどうやら事実ではなさそうだ。

「たしかにバーニングは宇多田の利権を狙っています。実際、今回のトラプルで宇多田サイドに貸しを作って、食い込もうとする動きもなくはなかったんですが、結局、手も足もでなかったんです。バーニング関係者に聞いたところ、『我々がどうこういえる話ではない』といってましたね」(週刊誌記者)

芸能ヤクザといわれるバーニングですらどうこういえない相手−−そう、実をいうと、『女性セブン」の輪転機を止めたのは本物の「ヤクザ」らしいのである。『女性セブン』関係者があたりを窺いながらこう話す。

「ようするに、藤の公演を仕切っていた興行会社がねじ込んできたらしいんですが、そのパックに暴力団がいたようなんです。なんでもその組というのは、広域指定暴力団の武闘派で有名な組織らしいですよ」

実際、今回の『セブン』が刷り直しに至るまでの過程にも、そちらのスジがチラついている。記事のクレーム処理に当たったのは、副編集長のEだったのだが、そのEが6日の深夜にある事務所に呼び出され、半監禁状態になったらしいとの証言もあるのだ。

「”電話じゃラチがあかねえから直接来い!”ってすごい剣幕だったみたいですよ。向こうサイドは、命もかけるほどの意気込みだったとも聞きました。当初はEも抵抗したらしいんですが、丸l日以上帰してもらえず、結局、応じざるをえなかったようです。それにしても、Eさんは『週刊ポスト』時代からイケイケで通っているタィブの人物。そんな人でも、今回の件では憔悴しきっていたようだから、身の危険を感じるようなことまであったんじやないかなあ」(前出・小学館関係者)

たしかに藤圭子に限らず、演歌の世界と暴力団の閥係は昔から極めて密接だ。各地方には、いわゆるショバがあり、その地域での公演に際しては、地回りのヤクザに取りしきってもらう。いきおいつき含いは深くなり、ゴルフや食事などを共にする機会も多くなる。過去、北島三郎や烏羽一郎の”黒い交際”が取りざたされたように、演歌と暴力団は切っても切れない関係にある。しかしだからといって、この程度の記事にここまで強硬に暴力団関係者が出てくるというケースはこれまで、聞いたこともない。実をいうと、これこそが宇多田ヒカルの抱えている「聞」の部分なのである。ある興行関係者がこんな証言をする。

「藤圭子と照實さんは長い間ドサ回りをやってきてますから、暴力団関係とも深いつき含いがある。このところ、ヒカルのイメージダウンになることを恐れて、地方営業を控えていた藤が公演をやったのも、こういったシガラミで断れなかったようなんです。ところがそこに『女性セプン』の記者が現われた−−。その報告を受けた照實さんが、藤圭子を通じてそのスジに『なんとかしてくれ』と頼み込んだんじゃないかといわれていますね」

あの宇多田ビカルと暴力団−−いやほやなんとも似つかわしくない取り合せではないか。しかし、日本人離れしたリズム感とのびやかな声で、「世界に過用する」とまでいわれるポッブアーティストも、その両親はまさに前近代的な日本芸能社会のしがらみと構造にドッブリと浸かっている存在だったというわけである。いや、それどころではない。今回のことでこの先、ヒカル自身もまさにその構造のなかに組み込まれる可能性だって否定できない。

「暴力団というのは常に金儲けのネタを捜してますからね。ここまで力を尽くした背景にほ昔のシガラミだけでなく、その先の”ヒカル利権”の一部に食い込もうという意図があるのかもしれない」(前出・興行関係者)

実際、印税やCM契約金、コンサート収益、各種グッズの販売利益など、今後、宇多田ヒカルに発生する利権はきわめて莫大なものになる。それを大手芸能プロやレコード会社、果ては裏社会までが手ぐすね引いて狙っているのだ。まさに彼らにとって今回のトラブルはその利権に食い込む格好の突破口になるのではないだろうか。実際、最近ではXJAPANのケースで見られたように「スキャンダル」までもが利権争奪の道具になってしまうのが、この日本の芸能界の構造なのである。そして才能は甘いものに群がる蟻に食い尽くされ、消費されていく−−願わくば、宇多田だけはそんな体質とは無縁な、ニューヨーク育ちの”ヒッキー”のままでいてほしいものだが…。〈敬称略〉